自然に寄り添う「アニミズム的感性」とは

思索

5月も中頃となり、田植えの季節となりました。

米と水、そして菌。

シンプルな原料を扱う我々酒蔵にとって、この大地と自然のもと、巡り巡って生かされているということを、田植えの始まるこの時期に感じます。

有名な考え方に、「アニミズム(animism)」というものがあります。

昨今の環境や自然保護の観点で登場することも多いとのことですが、
日本の風土・風習・文明の観点からも見出すことができる考え方です。

「八百万の神」という言葉に代表されるように、山の神様、田んぼの神様、トイレの神様(厠神 かわやがみ)、台所の神様など、無数の神様が溢れる多神教を土台とした神道が根付いていました。

その背景には、「アニミズム」の考え方があると指摘されます。

(以下、引用)

アニミズム

人間の霊魂と同じようなものが広く自然界にも存在するという考え。

自然界にも精神的価値を認めこれを崇拝する宗教の原型のひとつで、世界各地でみられた。今日でも、各地域の先住民の間で現存し、また、さまざまな宗教や民俗、風習にもその名残がある。

日本でも古来、森羅万象に精霊が宿っていると信じられ、唯一絶対の神が存在し、人間を裁くのではなく、あらゆるところ(山、海、川、動物、植物から家、厠にいたるまで)に精霊=神が宿って人々を守っていると考えてられていた。

アニミズム思想は、日本のように気候風土が比較的穏やかな地域でみられるという指摘がある。これは、自然を克服すべき敵対者としてみなす必要がなく、自然に対する畏敬の念が生じるからと考えられている。

一方で、近代人は、アニミズム思想を受け入れず、自然を人間のための道具とみなし、自然界の精神的価値を認めない傾向が強いが、今日の自然保護思想のうえで、アニミズム的な感覚や発想を再評価する動きも起きている。

(引用おわり、出典:https://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=72)

ともすれば、現代は科学の力で自然をコントロールできる時代です。
それによっての恩恵を存分に受けて、現代の私達の生活があります。

同時に、昨今の自然災害や疫病により自然界の大いなる力に圧倒されることも事実です。
コントロール不能で予測不能な領域、目に見えない自然界・生命の力に驚かされるのは、酒造りをしていても同じです。

表の無機的な利便性だけでなく、内奥に横たわる有機的な自然界の存在も忘れてはならないと思います。

たとえば、方法論の過去様式へ単純に逆行すべく、いきなり車や飛行機、携帯電話を無くすことはできるでしょうか?
現実的にまず難しいでしょうし、そもそも科学による恩恵を受けている現代の暮らしを過去や原始に単純に戻すだけでは、片手落ちだと思います。

重要なのは、表向きのハード(モノ)ではなく、その背後の考え方・思想であり、今の状況からどの方法論を選択し創意工夫していけるかです。
そして、現代において日本らしさを醸し出すのも、「自然を畏敬・礼賛」するアニミズム的感性だと思います。

今、脱炭素社会に向けてあらゆる技術開発が進んでいますが、
大いなる自然のチカラをお借りする
そんな感覚を大事にしたいと考えています。