「日本酒造り」とはなにか
いま、SAKEと日本酒は同一ではない、というのが業界の共通認識である。
2015年、国税庁によって日本酒は「原材米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒」という定義がされた。
これにより、海外で造るお酒(SAKE)は基本的に「日本酒」と呼ぶことができないのが現状である。
しかし、だからといって海外産のSAKEを軽んじる・排他する、というのは大きな間違いだと思う。
日本酒とSAKEの違い
以前、日本酒の定義として、上記の定量的な定義だけではなく、「日本精神の表現物」という定性的な観点も必要ではないかと書いた。
日本酒は、当然のことながらはじめから世界を意識して誕生したのではない。
日本の固有の環境によって、自然的に派生し、進化してきた結果が日本酒である。
よく知られる通り、日本酒造りに必須の黄麹菌(Aspergillus Oryzae)は、世界の中でも日本国にしか生息していない。
この黄麹菌(Aspergillus Oryzae)を活用して、麹造りを行い、自然界の酵母の力も借りて発酵させてきた。
自然を尊重し、今ある環境を活用した結果が今の日本酒造りであり、黄麹菌を使うかどうか等は、結果論にすぎない。
つまり、物理的には海外においても日本精神を表現することは可能である。
それは、その土地の環境・自然を積極的に活用し、自然を尊重したSAKE造りである。
海外産の素材を使おうが、海外において生産をしようが、呼称は変わるかもしれないが、
海外現地において「自然の尊重」という日本精神を体現することは可能なはずだ。
酒造りとはなにか
そもそも、酒造りとはその国その土地の風土・環境を反映したものでしかなかった。
現代のように科学が発達し、自然を矯正・制圧することができる時代とは異なり、
古来、人類はその土地の特性を活かして酒を醸すのが自然であった。
ビール、ワイン、ウィスキー、その他あらゆる酒類の起源は、各地で行われてきた自然な営為であった。
ワインにおけるテロワールやドメーヌは元来、言わなくても当たり前のものであったはずで、
日本酒でもその地域ごとの米と水で醸す地産地消の地酒が当たり前であった。
つまり、酒造りとは本来、その土地・風土と共に醸すものである。
理想環境(工場)と原料を準備し、効率的に全世界でテンプレ化する工業製品とは明確にその起源は異なる。
だからこそ、酒造りをするものとして、環境に即して醸すという原始的な姿勢は、いつの時代も顧みなければならない。
そして、日本酒のアイデンティティを明確化するためにも、「自然を尊重した酒造り」を心得る必要がある。